笑われた事でまたしても声を荒らげてしまった自分の端なさに落胆していると、フェイムが真っ赤に熟れた木の実を渡してきた。


「随分と二人は仲良くなったみたいだね」


木の実を受け取りながら、その言葉に首を横に振った。


「フェイム、それは勘違いよ。だって――」


変に誤解されるのも嫌だったから、否定の言葉を述べたのにも関わらず、それに被せるようにジルが口を挟む。


「俺は仲良くしようとしているが?」


「そうやって嘘ばかりつかないでくれる?!」


「嘘をついていたのはあんたの方だろ」


悪戯な笑み共に首に指を押し当ててきて、咄嗟に逃げようとした勢いで地面に足を取られた。


転ぶことを覚悟した直後に、がっしりと腕を掴まれてぐらついただけで終わった私にやれやれと声が降りかかる。


「……っ!!」


「だから、俺の腕を掴めって言っただろ」


ジルの強い力で引き戻されるように体勢を立て直したものの、彼は一向に私の腕を離そうとしない。


「ありがとう。あの、もう大丈夫だから離してくれる?」


「朝方少し雨が降って道がぬかるんでる所が多い。しばらくの間は――」


全てを言い切る前にそのまま私を抱き寄せたかと思えば、すごい速さで抱き上げられた。


突然の事に頭が追いついていないのを良しとしてか、そのままズカズカと歩き出した。