「ふぁああ……あれ、リゼ?ジル?僕寝ちゃってた……?」


横になっていたフェイムが起き上がって、寝ぼけまなこをごしごしと擦りながら、まだ覚醒しきってない頭で辺りを見渡した。


フェイムが起きたことによってジルの意識がそちらにズレたのか、抱きしめられていた腕が微かに緩んだのを見逃さなかった。


するりとジルの腕から逃げ出して、フェイムの元へと駆け寄って様子を伺った。


「フェ、フェイム!疲れてるみたいだし、ベッドで休みましょ?」


「そうだね……疲れもちゃんと取らなきゃだしね」


何気ない会話でなんとか場を乗り切ったかと思ったけど、ふとフェイムが私の顔を覗き込む。


「なんかリゼさん、顔赤いよ?」


「へっ?!」


その顔の近さにまたしても顔が熱くなるのを感じて、咄嗟に立ち上がって不自然な笑いを発してしまう。


「私もちょっと疲れてきちゃったのかも!あ、明日も早いし私もう寝るね!おやすみ!!」


またドキドキの連鎖がやってくる未来がこうも簡単に想像できて、私はその場に居ても立ってもいられなくなって言葉を吐き捨てるように言い放つ。


そして一目散に自分の与えられた部屋へと向かう途中、不意に手を掴まれ強引に引き寄せられるとまたしても耳元で囁かれた。


「おやすみ、リゼ」


ジルの悪戯な笑顔を見せつけられ、眉間にしわを寄せて舌を出し無理矢理腕を振りほどいて、この危険すぎる空間からようやく逃げ出したのだった。