ゆっくりと減速していくリュードルの背からするりと降りて、編み状に形を変えた弓矢の中でまん丸の瞳を輝かせたその子を抱き寄せた。
「迷子のドラゴンちゃん。君、ギルドで魔物と勘違いされて討伐対象に名前が上がってたわよ」
「クルル?」
「貴方の居場所はここじゃないの。ちゃんとお家に帰すから安心して」
私の言葉が通じたのか、逃げ出す素振りを見せない子供のドラゴンは、私の腕の中でじっとしながら自分よりも大きなドラゴンのリュードルに釘付けになっていた。
「またどこかで結界が歪んだようね」
『仕方あるまい。王都の神殿で任務をこなしているわけではないのだ。本来の力が発揮できていないのも、あの大馬鹿な王子のせいなのだからな』
落ち着きのあるその声は、私の前で翼を折りたたんで悠々と空を仰ぐリュードル本人の声。
聖女である私は、この国を護る守護竜であるリュードルと会話することができる力を授かった。
普通の人にはリュードルの声は聞くことも、姿を直に見ることもできない神に近い存在。
そんな彼と共に私がなんで辺鄙な森の近くにいるのかは、一週間前に婚約破棄をされたあの日、吐き捨てられた王子の戯言が現実としてやってきた結果がこれだ。
国外追放になることは免れたけど、通っていた学園は退学処分となり私は王都を追い出され……今に至る。