同じ過ちをもう二度と犯したくない、だから努力を積み重ねてきた。
クリスタルを元通りにすれば、また聖女としてやっていけるんだし、そんな難しく考えないでいこう。
暗い考えをどこかに投げ捨てるように顔を両手でパチンと叩いたのと同時に、部屋の扉が開いた。
「あー……もしかしてお取り込み中……だったかな?」
私の行動に少し驚いた様子で部屋に入ってこようとしないフェイムに、慌てて駆け寄って気にしないでと声を掛けながら彼の腕を引いた。
変なところ見られちゃった……弱気になるなんて私らしくない。
気持ちを切り替え終わった所で丁度良かったと思いながら、疲れ果てた顔をするフェイムにソファーに腰掛けるように促した。
そういや一つ前の村でもチヤホヤされてるのにも関わらず、げっそりしていたっけ。
「フェイム……顔色悪いけど、どうかしたの?」
「いや、ちょっと……こういう場が苦手というか」
水の入ったコップを彼に手渡し、少し窓を開けて風に当たらせる。
「注目を浴びるのが苦手とかそういうの?」
「うーん、なんて言うか……人に囲まれるのが嫌いなんだ」
「意外ね。色んな人と交流してそうな立ち振る舞いなのに」
「少しの間だけ王宮で務めていた頃に、そこら辺は嫌でも身についただけだよ。嫌になって逃げ出したけど」
そう言えばフェイムの事については知らないことが多い気がする。