得意な回復魔法は、二人が強すぎるせいで使うことはまずなくて。


だからと言って何もしないのも、申し訳ないという気持ちが滲んでしまう。


フェイムに心配しなくてもそのうち機嫌が直るよと声を掛けてもらったものの、本当にそう簡単に許してくれるかどうか……。


本当に何もしないでぼうっと突っ立っているのが正解なのか、どうなのか。



「ったく……余計な時間を掛けさせやがって……」


「リゼさんは手伝おうとしてくれただけだよ。そんなに感情的にならなくてもいいんじゃない?」


「雑魚相手に時間を使ってる暇があったら、さっさと大森林に投げ込んでやりたいんだよ」


「な、投げ込むって……」



ジルならやりかねない、というかやられる。


ごくりと唾を飲み込む私に容赦なく剣を突きつけると、ジルは低い声で忠告する。



「いいか、よく聞け。俺の邪魔をするな。例えあんたが俺の雇い主だろうがなんだろうが、これ以上俺を怒らせるようなら容赦しない」


「き、肝に銘じておきます……」



怪しく光を反射させる剣に今にも喉を切られそうな感覚に、背中を冷や汗が流れた。