「我が国の聖女様はとても立派なお方だ。軍事国家と謳われていても、傍で支える者が必要だからの。国のもう一つの顔と言っても過言ではあるまい」


「凄い方なんですね」


「ああ、それはとても。魔物は確かに生活を脅かす存在でもあるが、その魔物から得られる素材は国を豊かにするからの。噂じゃ隣国のアンゼリオでは聖女様の力が弱いせいで迷宮周囲のみにしか結界が張れんらしい。その結果が破れたら……国は壊滅的じゃろうなあ」


「あはは……そう、ですね」



引き攣り笑いを向けながら、内心回れ右してこの場から立ち去りたい気持ちに啄かれる。


こんな所で自分の悪い噂を聞くなんて思ってもいなかった。


ごめんなさいね、聖女の力が弱い落ちこぼれで。


というか、隣国でも私の力がないなんてこと広まってるの……?常に神殿にいる私は外部との関わりが一切ないっていうのに。


頭を抱えてよくよく考えたら、犯人は一人しかいない。


ヤケに私のことを嫌う馬鹿王子なら私だけじゃなく、国のあれこれを簡単に口から吐き出してしまいそうだもの。