*
鬱蒼と生い茂る木々が作り出す孤独の森に、今日は騒がしく森の悲鳴がこだましていた。
木々の枝が折れる音と、森で暮らす動物達が逃げる足音を背に、目標を捉えた私は指笛を吹いて全力疾走で風を切った。
「リュードル!」
大きな翼の音が聞こえたと同時に、姿を表した巨体の持ち主の相棒ドラゴンに、私は辛うじて使える浮遊魔法を発動させてその身を預けた。
安心感のあるリュードルの鱗の感覚が手のひらに伝わり、叩きつける風が髪を掻き乱しては流れていく。
その屈強な体から感じられるエネルギーに微笑みながら、私は目標を指さし一気に距離を縮めた。
片手をリュードルの首に回し、もう片方の手を大きく上に突き出し指先に全てを込める。
「気高き竜の鳴き声と共に君臨し光の礫、我が身に力を《レオニード》!」
詠唱と共に光の矢が意志を持つように飛んでいくと、目標の行く手を阻み見事無事に捕獲出来たようだ。