確かに二人とも顔はいいから食いつきたくもなるわよね。
フェイムは優しいし思いやりもあるいい人だから食いつくべきだろうけど、その隣に座る男はやめておいたほうがいいと思う。
なんて口が裂けても言えないけれど、口の中に入れたスープを思わず吐き出してしまいそうになる光景が私の視界に飛び込んで来た。
「どれもとても美味しいよ。この村でしか味わえない食材も多い。手間暇掛けて作ってきてくれて、本当にありがとう」
輝く笑顔を女性たちに向けるのは、フェイムではなくあの意地悪な嫌味ったらしいジルだった。
にこやかな笑みを浮かべるジルはどうやら、女性相手には手馴れているようだ。
逆にフェイムはどこか固まったようなご様子で、先程私に向けてくれた笑顔すら見せていない。
ジルの感想に黄色い歓声が上がり益々盛り上がりを見せる女性たちだったが、突然私に向ける目が冷たくなるのを感じる。
分かりやすい状況下に、私は何も言うことなく黙々と食事にありついて一刻もこの場から立ち去ろうと、女性たちの視線を機敏にも躱してみせた。
生憎そういう視線には慣れっこなもので、王宮でのクリフ王子に遣える侍女達の嫌がらせに比べれば全然大したことはない。
邪魔者はさっさとこの場から消えるから、せいぜい媚びを売ってくださいな。