部屋の隅に移動するジルの後ろ姿を見つめ、私はもう一度ベッドに顔を押し付けてバレないようにため息を零す。
小さな村ということもありやってくる旅人の数も少ないのか、この宿屋の部屋数もそう多くはない。
有難いことに無償で宿泊をさせてくれた村長には感謝だけど、どうしてこの顔だけはいい騎士団隊長様と同じ部屋で寝泊まりしなきゃならないんだか……。
ベッドからそっと起き上がり、久々に長時間歩いたおかげで悲鳴を上げ、痛みを滲ませる足を隠すようにしながら、今後の旅の計画を疲れた脳みそで考えながらジルとの関わりはなるべく避けようと試みた。
契約主は私でそれ以上でもそれ以下でもないんだから、これ以上関係を深めることも、関係を壊すこともない。
ただ事があれば平然と対応して、それで終わりにしよう。
絶対にあの人のせいで気分を害するのは、金輪際なしがいい、いいに決まってるんだから。