「疲れたら遠慮なく言ってくれていいからね」


「ありがとう。でも少しでも早くクリスタルの力を取り戻したいから」



優しさに甘えたいけれど、ジルの歩くペースに着いていけなかったら切り捨てられて終わるのを忘れてはいけない。


ふとジルを見ると舌打ち混じりに騙されなかったかと小声でボヤいて、スタスタと歩き始めていた。


あっぶない……あの男に騙される所だったわ。


とりあえずのやる気だけは見せつけて私も遅れないように歩き出すと、遠くに小さくだけど煙が上がっているのが見えた。


「根気詰めるのも、後々体力がなくなってしまう原因の一つだよ。この先にある村で少し休ませて貰おう」


「だな。荷物の整理もしたい所だ」


もう少しで休憩できるという喜びに顔が緩んでしまうのを必死に堪えて、少し前に出て歩く二人に置いてかれないように歩幅を合わせて歩いた。

道中はジルとの会話はほとんど無くて、フェイムに自分の家族のことや生い立ちなんか話して気分を紛らわせた。

ただ頑張って歩いた分だけ近づくはずの休憩地点の村までに、野生の狼や熊との遭遇によって足取りは随分と遅くなってしまった。