粗方の荷物を詰め込んだ鞄を背負いながら小高い山の頂上から、風で波打つ広大な草原を見下ろし私は一つ伸びをした。


アンゼリオ国とシェルアバド国の間を流れるゼツァーラ川に掛かる橋を渡り国境を越え、あれだけ大きな川だったのにも関わらずその姿はもう拝めない。


ここからじゃ王都も見えるわけもなく、遠ざかっていく住み慣れた国に少しだけ寂しさを覚えた。


国外追放されたわけでもないのに、疑似体験でもしている気分。


そんな私の心境なんて全く知らないジルとフェイムは、慣れた足取りで道をどんどんと進んでいく。


二人の後ろ姿を見つめながら、何とか追いついていける自分を褒めながらも、どっと押し寄せてくる疲労が足に絡みついて離れてくれない。


いつかの誰かが口にした過去の栄光に縋るな、という言葉を痛感するというかなんと言うか。


幼い頃には両親と共に旅に出ていたお陰で体力は有り余っていたから、てっきり全然自分には体力があるもんだと思っていたのに。


神殿で聖女の仕事をし始めたというもの、ほぼ引きこもりになったせいで体力は底を尽きていたようだ。