精霊レヴィローラ大森林……確かデンメルク連峰に囲まれた人が統治していない古来から大精霊が守る森。
森には魔物達が住み着き、何千年とそこで独自の生態系を作り出しているとか、何だとか。
父が一度冒険者達と足を踏み入れたことがあると話していたが、森に人が入ることを強く拒み魔力の渦で追い出されたと苦笑混じりに言っていた気がする。
危険な土地に一体何が関連するのかと首を傾げると、フェイムは話を続けた。
「精霊レヴィローラは、この世界に存在する聖女が持つクリスタルを生み出した存在だと云われているんだ。そしてクリスタルが壊れれば母の元にクリスタルは還る、その仕組みが成り立っている……と」
「えっと、つまり?」
「クリスタルが壊れ、本来宿っている力がそのクリスタルにはない。その力が何処へ還ったかと言えば、母である精霊レヴィローラの元へ還るということになる。そのレヴィローラに再び力を宿して貰えれば万事解決ってこと」
「聖女の証があるなら王宮に乗り込んでも問題ないしな」
「ジル……王宮に乗り込むことしか考えてないの?」
「当たり前だろ。馬鹿王子の腐った根性叩き直してやるまで気が済まねえんだよ」
ジルのやりたいことは少し物騒ではあるが、クリスタルの力を取り戻せれば追い出すということはまずしてこないはずだ。
残された唯一のこの方法で私は命を繋ぐしかない。
欠けたクリスタルをぎゅっと握りしめて、決意を固めた。