困った私は勢いのまま着いていきそうになる自分の未来図を阻止するために、とりあえず治療の続きといってこの場に留めるのを選んだ。


ただそんな私の味方をしてくれるかのようにフェイムが、私の前に背を向けるようにして立ち今にも動き出そうとするジルを止めてくれた。


「直談判ってジル、殿下から言われたこともしかして忘れてる?僕達に与えられた命令は、国境付近の調査のみ。原因が分かり次第、王都へ戻るように言われているだろう?それなのに直談判しに行って、殿下の仕事を増やすような真似は……騎士団長としてどうかと思うけど」


フェイムがやれやれと言った様子でジルの言動を窘めると、ぐうの音も出ないのか、ジルはバツの悪そうな顔で頭を一つ搔いた。


ようやく落ち着きを取り戻したジルを見て私に向き直ったフェイムは、胸に手を添えて頭を軽く下げた。


「色々と申し訳ないです。此度の騒動も我々が撒いた種によって引き起こったこと。リゼさんの立場を危うくしてしまった上に、より騒動を大きくしようなどと考えた僕の馬鹿な相棒をどうか許してやってはくれませんか?」


「許すも何も、私にも落ち度がありましたし」


「リゼさんが心優しい方で良かった。あ、自己紹介がまだでしたね。僕はフェイム・バーシェット。魔導士の端くれです。どうぞフェイムとお呼びください」


「畏まれるような身分ではないので、普通にして貰えると助かります」



王宮では下っ端の侍女達と同じような待遇を受けていたこともあり、フェイムの言動にむず痒さを感じてしまう。