私は聖女としての務めを全うできる今の自分を誇りに思えるし、国で生きる人々の声を間近で聞いて、聖女として守るべきものは何かを実感できている。


私が守りたいもの、それは。



「リゼ様!この前は怪我を治してくださりありがとうございました!」


「リゼさん!今日も精が出るな!」


「お菓子を作ったの。後で食べにおいでよ」



何気ない日常にある、この皆の笑顔。


私は腕の立つ騎士でもないし、知識のある魔道士でもない。


加護の力というものを持った、この世界に限られた数しかいない聖女という存在。


まだまだ未熟な私だけど、私にだって守る力は備わっているから、やるべきことはただ一つ。


そう――この笑顔を守る。


その為に私はここで、与えられた仕事をこなしながら聖女として一人前になれるように腕を磨くしかない。


ふわりと吹く風に、額に薄らとかいた汗が拭われたのに気づき、そっと腕で拭う。