その温もりに落ち着きを取り戻した私は、ジルの目をじっと見つめた。
ああ……真剣な瞳に吸い込まれそう。
ジルに落ちる前に、そうなる前に、私はちゃんとジルの口から聞きたいことがある。
「一つ……一つだけ聞きたいの」
「なんだ?」
ようやく恋人のフリをした時の理由が聞けると、ほんの少しの喜びと緊張が体に走る。
「あの……なんで、恋人のフリなんかあの時したの?」
恐る恐る聞く私に、一瞬だけキョトンと呆けた顔をしたジルは、バツの悪そうな表情を浮かべる。
「あの時は……その、誰かに後を付けられてるのを感じてたんだ。あの獣人だったかもしれない。俺の動きを監視されてるのが腹立たしいのに加えて……その、だな」
急に言葉が詰まるジルに首を傾げると、重たいため息と共に、ジルはほんの少しだけ顔を赤らめる。
「もう少しで旅が終わって、リゼが俺の傍から居なくなるって考えたら、無性に苦しくて、どうしようもなくリゼが欲しくなったんだ」
「……!」
「惚れた女に触れたいと思って何が悪い」
驚いた私の反応が、ジルに取ってはどういう風に写ったのかは分からないけど、歯向かうような挑戦的な目に、ドキリと心臓が高鳴る。
「恋人のフリなんかじゃなく、改めて俺から言わせてくれ。――心から愛している、リゼ」
「っ……私も……ジルの事が好き、大好きよ」
自分でも歯止めが効かなくなるくらい、ジルを欲していた。