ただ私は目の前に立つ隣のクラスのクラスメイトだった人間に対して、体験したことのない感情に襲われていた。


「クリスタルも聖女に選ばれた人間しか持てないから、馬鹿王子に近づいて色々と小細工をしてやっとの想いで壊せたのよ。よく出来た犬だった。私のことを意図も簡単に信じて、あんたを楽々と追放できたんだもの」


「……」


髪飾りの鈴をわざとらしく鳴らして、私が犯人だと確信した証拠の品を見せつけてくる。


「この鈴はね、私の能力の一つ魅了の音《ドミネーションリズム》が込められているの。鈴を与え音を聞かされた人間は、私の言うことはなんだって聞く……私は絶対的支配者になれるのよ」


「それでルリナさんやトウハさんを――」


「ああ、あの道具も使い物にならなかったわね。細工を施したあんたのクリスタルを壊した後、一時的にクリスタルであんたの行動を監視してたら大森林に向かうことが分かったから、使える手駒を集めたのよ」


人を物扱いする彼女に、あの二人がどれだけ苦しめられていたのか理解するのは無理なんだろう。


「計画にズレはあったけど、神様がようやくあたしに味方してくれたかのように騎士団長様に、それに恋する乙女がいるんだもの、使うに決まってるじゃない。まあ……あんたを殺すことまでは出来なかったから、結果的に自分の手でやるのが一番早いってことが分かったけど」


向けられた短剣にもう恐怖心なんかどこにも無かった。