それ以外は何も望みません、だからどうか……この出来事が悪い方向へ傾かないよう見守りください。
私は絶対に二人を守ってみせる、もう間違った選択を選んだりしないから。
突き進む道にどんな困難が待ち受けていようとも、乗り越えるための努力を私はしてみせる。
「行くぞ」
開け放った扉の向こうから微かに差し込む外の光に少しだけ目を細めて、ガラリと空気が変わった城を見上げた。
あれだけ美しく立派にそびえ立っているはずの城は脅威に怯え、影が侵食してくるのを震えながら待っているように見えた。
辿り着いた中庭の茂みから出て、真っ直ぐに城へと伸びる一直線の道には逃げ遅れた数人の兵士達が怪我を負い、その場に横たわっていた。
「なんて酷いことを……」
何の罪もない人を巻き込んで、一体何をしたいって言うの?
ふつふつと湧いてくる怒りに身体が勝手に動こうとするのを、頭の片隅にいる冷静な私がそれを止めた。
一人ひとりの手当てを今すぐにしてあげたいけれど、私には最優先にやらなければいけないことがある。
止めなきゃ……こんなこと絶対に。
ここは兵士の皆に少し耐えてもらうしかないと、下唇を噛み締めながら前へ進むジルを追いかけた。
時折茂みから突如現れる魔物にも、二人は冷静に対処し、遂に城へと足を踏み入れた。