服の上から滲む血液に下唇を噛み締め、失礼しますと一言添えて袖を捲り上げ、現れた傷を見て一つ呼吸を整えてから、その場に正座して彼の腕に手を添えた。
「我、古の女神より落とされた加護の力受け継ぐ者。汝との間に生まれしクリスタルの輝きを癒しに換えて、この手に宿れ《回復魔法【ヒール】》!」
唱えた言葉と共に手から流れるように光の礫が出現し、傷口へと降り注いでいく。
その光に集まった自然界の精霊達の楽しそうな笑い声が私の耳に響くと、森全体が少しだけ湧いた。
黄金色の眩く光が彼の傷を覆い被すように広がると、開いた傷口がみるみるうちに消えて無くなっていく。
痛みから解放されたのか苦渋を浮かべた顔がゆっくりと穏やかになっていくのを見届けて、私はゆっくりと立ち上がり地面に伏せっている親ドラゴンの元へと向かった。
「私はリゼ、この国の聖女よ。ここは貴方達の住む世界ではないの。貴方の子供はここにいるから安心して家へお帰り」
子ドラゴンをこっちに来るように呼ぶと、ようやく出会えた母ドラゴンに嬉しそうに飛びついて行った。
自分の背に乗った我が子を愛でるように一つ鳴いて、私を見て目を伏せたかと思えば結界の中へと迷わず進んでいく。