それにフェイムは私よりも遥かに上の力を持つ魔道士だし、誰よりも信用できる人なんだから心配ご無用。
影が伸びてきて私達に攻撃を再び仕掛けてくる寸前、私達の足元を照らした魔法陣が、瞬時に私達を別の場所へと移動させた。
澄んだ空気に真っ白な遺跡はまだ魔の手から逃れられていたようで、ここは何者にも手を染められていないことに安堵のため息をついた。
水路を流れる水の音が心地よく聞こえてきて、その音と一緒に先代の姿が脳裏に浮かんだ。
初めて聖女の力を見せて貰ったのも、小さな光属性魔法の展開を教えて貰ったのも、怒られたのも褒められたのも――全部ここだった。
私のこの国での唯一の居場所であるアンゼリオの神殿は、影に染まることなく先代達が力を込めた魔法により守られていた。
胸を撫で下ろしながら近くの支柱を撫でれば、お帰りと言ってくれるように淡く光った。
ただいま。もう大丈夫、この場所もこの国も私が守ってみせるから。
「ここは……」
「アンゼリオの神殿よ。守りの力によって影には染められてないの。そして――」
私は神殿の中心に描かれた魔法陣のほんの少しズレた石版をゆっくりとずらしながらクリスタルを窪みに嵌め合わせると、祭壇の奥に描かれた壁画が勝手に動き出し、その真下には口を開けたような地下へと続く階段が現れる。