そう長い間留守にしてないはずなのに、風変わりな城は人を寄せ付けない程に禍々しい。
……どうやって城に入り込めばいいのか、考えたくても影が私達に近づいて攻撃を繰り出そうと怪しげな動きを繰り返す。
魔力が戻った私は必要とあらば光の盾を作り出し、攻撃を回避する。
攻撃を受け流しながら、ふと唯一その禍々しさから距離を取っている場所を見て、一つ閃いた。
真っ白に輝く影なんて知らないその場所なら、きっと……!
「ジル、フェイム。今度は私を信じて着いて来てくれない?」
「今度はどんな馬鹿な事をしようって言うんだ?」
「馬鹿なことじゃないから!それに落ちこぼれなのはもう終わり。今の私には聖女の力があるんだからね?」
小さく笑って見せて、フェイムに転移魔法の魔法陣を描いてもらうように声を掛け、私はフェイムに被せるように詠唱を唱える。
転移魔法は手書きの魔法陣を書いてからじゃないと上手く発動出来ないけれど、それの完璧な形態を作り出してもらえば、後は唱えるだけだ。
「地と地を繋ぐ掛橋よ いざ我を導かん《シュッド=ジェルガ》」
この場合、魔法陣形成と詠唱が異なる人物が作り出した混合魔法だとしても行く先を私は指定しただけ……だから絶対に失敗はしない。