王宮を追い出されて、どうしたものかと漠然とした不安定な未来を抱き抱えた私はもうどこにもいない。


守りたいものを守る、それを教えてくれた大切な仲間がここにいるんだから。



「リュードル、迷宮の結界は」


『異常なしだ。歪みによって出てこようとする魔物は力で封じ込めてある』


結界が破られている心配はなし……と。


どうやら結界を破っている暇があったら、暗黒竜復活に魔力を注いでやったほうが利益が大きいと判断したようね。


悪役にはぴったりの演出が欲しいもの……なのかもしれない。


まだ街や村には被害は出ていないとなると、本当にやるべきことは目の前にあるものだけのようね。


「落ちこぼれの意地を舐めないでよ」


「その意気だ」


ふっと笑いかけてくるジルに、こんな状況でも胸がドキドキしてしまって頭を抱えそうになるのを必死に堪えて強く頷いた。