瓦礫の山の前で器を無くした私の力は、私に吸い寄せられるように光の粒となって追いかけてきて、私の胸の中に溶け込みながら消えていく。


ドクンと胸の奥深くで熱く広がる力の波に一瞬苦しくなるけれど、すっと打ち解けるように馴染んでいく。


『これでアンゼリオの聖女様のお帰りだ。一時はどうなるかと思ったが……何とか持ち堪えられた』


「リュードル、私がいない間に何があったの?」


私が尋ねると同時に翼を羽ばたかせたリュードルは、大空を駆けるように宙を舞う。


久々に感じる地上を離れたその風の香りに、少しだけ心が落ち着くのが分かる。


そんな私の心をよりかき乱すかのように王都の方から禍々しい黒い光が落ちるのを、この目がはっきりと捉えた。


その直後、王都の上空にぽっかりと黒い大穴と複雑な魔法陣が形成されては黒い霧が地上へと手を伸ばすように降りていく。


「何よあれ……」


「暗黒竜【エクリプスドラゴン】……太古に封印されし、闇を生み出した破滅をもたらす魔物。まさか、あれを復活させる力を持つ人間がこの世にいたなんて……」


フェイムの絶望が混じったその声が指し示す魔法陣は、どうやらかなりやばいドラゴンを復活させるためのものらしい。


暗黒竜と呼ばれる魔物はまだ復活してはいないけれど、王都を覆い被さる程の大きな穴が上空にある時点で、安心なんて出来るわけはない。