あれだけ移動手段を探していたというのに、フェイムの転移魔法のお陰で必要最低限の日数のほんの一部僅かな時間で移動が完了してしまった。


ただアンゼリオにはフェイムが普段使用する転移地点がなかったため、一度訪れた場所まで――つまり私達が最初に出会った辺境の地に辿り着く。


穏やかな風と優しい空気が流れる私からしてみれば、自然豊かな素敵な場所であったはずなのに、その景色はいつもと違って見える。


落ち着きがない、そう言ってしまえばいいのだろうか。


土も草も風も、そこに生きる自然たちが何かに怯えている……そんな胸騒ぎが私に伝わってくる。


「リュードル!!」


懐かしいおんぼろ我が家へ二人を連れて行き、頼れるその者の名前を呼ぶけれど反応がない。


おまけに元々廃屋だった我が家は何者かに襲われたのか、ボロに磨きが掛かり、瓦礫が山積みになって建物としての役割を担えなくなっていた。