「お楽しみはここからだ。本気でかかって来いよ」
挑発するジルに今更動き出そうとする盗賊は誰一人としていない。
それくらいジルの放つ殺気だったオーラが、敵意を向けられていない私にでさえ刺さってくるのだ。
それを分かっていてか、ジルは倒れた盗賊が落とした剣を取ると一気にルリナさんの元へと距離を詰めると、彼女が手にしていた鈴を奪うと、そのまま迷いもなく鈴を壊した。
一瞬の出来事に獣になったトウハさんは、身動き一つ取れずにその光景を見つめている。
宙を舞いながら地面へと落ちていくその鈴に、私は見え隠れしていた一本の糸が見えた。
――あの鈴をどこで見たのかを鮮明に思い出した。
呪縛が解けたトウハさんは我に帰り、ルリナさんの近くにいた盗賊の頭であろう巨体な男は、ジルの見事な剣捌きによって呆気なく倒れた。
頭が倒れた以上盗賊達はもう逃げることさえせず、諦めた様子で各々その場に座り込んだ。