低く地面を這うその声が私だけでなく、周りにいた盗賊達の肩すらも震わせた。
怒りに染まったその声に唯一反応出来ずに思考停止しているのは、フェイムだけ。
「何がとっておきの時間稼ぎ方法だよ。ふざけんな」
私達の間に入り込んだその正体は……意識を取り戻したジルだった。
するといきなりフェイムの胸ぐらを掴んで座り込んだフェイムを立ち上がらせると、怒りを隠すことなく全身から解き放っていた。
「城を離れた後、一体いつどこでそんな馬鹿げたことを学んできた!お前に命を犠牲にしろと教えた奴を、俺は容赦なく斬るぞ!いいか!お前のそのちっさい頭に叩き込んでおけ!お前は俺の大事な友人であり、大事な家族だ!!勝手に死のうなんざ許さない!背中を預けられる相手を失ってたまるか!!」
吠えるジルにフェイムはようやく自分が置かれている状況を理解して、慌てて人間の姿に戻ろうとするけれどジルがそれを阻止した。
「今更、隠しても無駄だ。人間じゃなくたって……フェイム、お前は俺の兄弟であり、いい相棒だろ」
「ジル……」
「さて。この話はとりあえずここまで。今はこの状況の打破って所か」
掴んでいた胸ぐらを離すと、私達を取り囲む盗賊達に威嚇するように睨みつける。