こんな人に絶対にジルを渡すもんですか。



「リゼさん、時間がない。ジルを連れて魔法陣の中心へ」


「私もありったけの魔力を使って結界を張る。そうしたらフェイムも一瞬に逃げれるでしょ」


「そんな結界張る時間、今あると思う?」


「……っ」


正論だ、もう言い返すことも自分の意見を言える状況でもない。


でもまた、目の前で手を伸ばせばそこにいる彼から目を背けて私がまた生き残るの?苦しい目に合わないで、私だけが傷つかずに生きてくの?


「僕にはとっておきの時間稼ぎ方法があるの、リゼさんなら知ってるでしょ」


「……フェイム、あなたまさか!」


待ってと言うよりも先に一人の盗賊が斬りかかりに来る寸前、フェイムは自ら魔族の姿へと変化する。


エルフ特有の尖った耳が髪の間から覗き、首筋に紋様が蠢いた。


私が美しいと思う姿は、他の人から見たらそれは……。