私の偽物のせいで動き出した影が、大切な人達を傷つけようとしてるのに、それを見て見ぬふりなんかできるわけない。
もう過去のように誰かを守れないなんてこと、絶対に嫌だもの。
戦う術を持っていない私に今出来ること……魔力は底を尽きるかもしれないけれど、小さな結界を張ればその間に三人で脱出も不可能でもない。
結界がどこまで持つか、それにどこまで脆いか……そこが予測できないせいで無闇にやって返って不利な状況に持ち込まれたら……。
「その馬車にいるジルゲイル様を私に頂戴。その方は私の物よ。お前みたいな虫が集っていいお方じゃないの。身も心もその方は私の物なんだから!これから先、ジルゲイル様の隣にいるのはこの私なのよ!拒否するっていうものなら、獣になったトウハがあんたの首を一瞬にして噛みちぎるわよ!」
考える私を邪魔しようとするように、ルリナさんが大きく叫ぶ。
ジルを物扱いすることに憤慨しそうになるのをぐっと堪えて、ジリジリと詰め寄ってくる盗賊達はジルを寄越せと目で訴えてきた。
馬車の中で苦しそうに唸るジルを見て下唇を噛み締めながら、そっと馬車からジルを下ろした。
「ああ!愛しのジルゲイル様!私のジルゲイル様!今、私が貴方様を永遠に愛してあげますからね!うふ、うふふふふふっ!!」
歓喜の声を上げるルリナさんが悪魔に見えて、抱き寄せたジルに力を込める。