「トウハさん……?」
「グルル……」
「!!」
牙を向けるトウハさんは今まで私と接していてくれていた彼ではもう無くなっていた。
「あの鈴がトウハさんを……?」
音のなる鈴が何かを引き起こしているのだと理解するのと同時に、あの鈴をどこかでみたような気がした。
それがどこで見たのか思い出したくても中々思い出せずにいると、静かな足音が近づいてきた。
「リゼさん」
馬車の隣に立っていたフェイムが小声で私に合図を送る。
緊迫した状況でもフェイムは至って冷静で、それが少しだけ怖く感じてしまう。
「二人はここから逃げて」
「馬鹿なこと言わないでよ」
「魔法陣に転移魔法も組み込んだから。僕が囮になって時間を稼ぐ間に、ジルと一緒に魔法陣で避難して」
「フェイムはどうするのよ!」
「分からない。戦闘に向いているタイプじゃないから、どこまでやれるか自分でも分かっていないんだ」
あっさりと自分だけ傷つく準備は出来ています、なんておかしな発言をされて、頭に血が上った。
こんな所で大切な仲間を残して行けるわけない。
守りたいものがあるんだから、私だって最後まで抗いたい。