強い二人がいればこの場は何とかなるかもしれない、そう思って私もジルに治癒を施す。
ただそんな私の心の中に生まれた小さな希望はすぐに打ち消された。
「トウハ!!」
聞き覚えのある声に思わず私は馬車から身を乗り出すと、道を塞ぐようにもう一台の馬車がそこにあった。
そこから降りてきた流れる金髪の持ち主を見て、無意識に眉間にしわが寄ってしまう。
「あら。まだ邪魔な虫がジルゲイル様に集っているの?」
一人の盗賊を横に連れて歩く可憐な姿は、一人の令嬢としての振る舞いは忘れていない。
「ルリナさん……」
「トウハ。私の邪魔をするなんてお前もいい度胸じゃない」
「……ルリナ様、もうおやめください」
「私に逆らうっていうなら、無理にでも話を聞いてもらいましょうか」
「っ……!」
ルリナさんが胸元から何やら鈴が複数ついた首輪をトウハさんに見せつけると、彼の様子がおかしくなった。