って呆気に取られている場合じゃなかった。


馬車の扉を開けて中に乗ってる二人の安全を確保しなきゃ、と動き出す私に遅いとでも言うかのようにいつの間にかトウハさんが扉の前へと移動していた。


「失礼致します」


そう言いながら長い足を使って扉をぶち破いて、無理くり中へと入り込む。


何とか足場を見つけた私も地面に降り立つと、馬車の中でぐったりと倒れ拘束された二人を見つけて思わず駆け寄った。


「ジル!フェイム!」


「どうやら気を失っているようです」


足場の高い馬車を不格好にも乗り上げると、二人の元へと近づき拘束を解き回復魔法を唱えた。


目立った外傷は見当たらないけれど、ほんの少しだけ麻痺状態になっている。


こんな手荒な真似をして何がしたいっていうのよ。


激しい怒りが私の中でフツフツと燃え上がっていると、トウハさんが黙って馬車から離れていく。


「トウハさん、どうし――」


最後まで聞く前に、森の木々の間から湧いて出てくる盗賊達の姿が見えて一瞬息が止まる。