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二人の行方を掴む手がかりは無かったものの、兵士を偽った盗賊はジルに足を用意してあると言っていたことを思い出し、街から複数伸びる馬車の走った跡を確認していく。
トウハさんは獣人ということもあって鼻が効き、私に微かに移っていたジルの匂いを頼りに一つの馬車の足跡を追いかけた。
街からの混乱した声が響き渡って聞こえてくるのを、振り替えずに前へと進んだ。
どうやら追いかけている跡は正解のようで、どんどんと舗装された道から逸れ森の方へと向かって伸びていた。
「……近いです」
トウハさんの獣耳が僅かな馬車の走らせる音を捉えたようで、一気に加速していく。
ガクンと大きく揺さぶられるのを、トウハさんに必死にしがみつき振り落とされないようにする。
密着しているというのに安心感よりも不安定感しかないのは、この状況に慣れていないからだと信じたい。