ただこの街の状況からして、国へ帰るための足を見つけるのに時間を取られるのは目に見えている。
だったら今私に出来ることをすればいい。
「私、一人で帰れそうになくて、彼らに頼るしか宛が他にないので」
「しかし、乗り込むのは武器を構えた盗賊達の元ですよ?」
「守りたいものを、今度は命を掛けて守れって教えてくれた好きな人を守りたいんです。――あなたと同じように」
きっとトウハさんだって、あんなに貶されて侮辱されたとしても、ルリナさんを心から想っている。
じゃなきゃ、今頃とっくに見捨てているに決まっているもの。
トウハさんの瞳が小さく瞬きはにかむと、何も言わずに私に背中に乗れと親指で示してきた。
遠慮なくトウハさんの背中に乗ると、彼は大きく大地を蹴って行動を始めた。
お互いに大切な人を守るために、私達は真っ直ぐに前を見据えた。