『守りたいものほど、それは直ぐに消えてしまう。なら……大事に大事に守ればいい、寄り添えばいい。全てを守るのではなく、一つ一つ丁寧に守りなさい。強欲に塗れるのではなく、ただ純粋に守りたいとだけ願いなさい』


そう、守りたいから。もう、失いたくないから。


私は守るべきものを守りたいと願って生きていかなきゃいけない。


「私……落ちこぼれでもしっかり務めを果たすよ」


止まらなかった涙がもう顔を上げていいよとでも言うようにピタリと止まり、ジルの顔を真っ直ぐに見つめた。


「それでいい。アンゼリオはリゼが守るんだろ?」


国という大きなものを守るんじゃない。


私はそこに住まう人々一人一人の幸せと、そこに宿る儚い命を守りたい。


それが出来るのは、聖女として力を授かった私だけだから。


それと――私自身のこの気持ちも大切にしなきゃ。