それもこれも全部“自分が悪い”せい、なんだから。
「荒れた村の隅で、一匹の魔物が少年を襲おうとしているのを発見したの。助けてって私に手を伸ばしていたの。だけど先代と同じように結界のような盾魔法で、少年を守ろうと自信過剰に魔法を使って……聖女としての力の宿っていなかった私には完璧な盾魔法なんか使えなくて――脆い盾は魔物の攻撃を許し彼は左腕を失った。私のせいで!彼は腕を失ったの!!余計な事をせずに、助けを求める彼の手を引いて自分を犠牲にしてれば彼は守れたのに!」
「リゼ!」
興奮が収まらない私をジルがきつく抱きしめた。
彼から感じる体温が自分を優しく宥めてくるのが、どうしようとなく腹立たしかった。
私にはこんな優しい温もりを感じていい資格なんか、持っていないはずなのに。
「わた、しなんか……私なんかが聖女にならなきゃ良かったのよ……」
「過去は変えられない。だからって今のリゼが全て悪い理由なんかどこにもないだろ。守りたいって気持ちがある今のリゼに、嘘なんかどこにもない。聖女として守りたいものを、今度は命に変えてでも守ればいい」
「っう……」
止めどなく溢れてくる涙を今度は拭うことすらせずに、ジルの鼓動が響く胸の中で子供のように泣きじゃくった。
何も言わずにずっと胸を貸してくれるジルは、壊れそうなものを壊さないようにそっと頭を撫でてくれた。
あの時も壊れたように泣いた私を慰めてくれた先代の言葉の記憶が、今鮮明になる。