私がジルとキスをしたことなんか知るはずもないフェイムだけど、私がジルに対する態度をあからさまに出しているせいで、様子が違うことから何かを察しているようだ。
昨日分かった自分の気持ちが、どんどん歯止めが利かなくなるんじゃないかって少し怖くなる。
――いや、怖くない。ちっとも怖くなんかない。
だって今日という日が終われば、私は国へ帰って聖女としての務めを果たさなきゃいけないし、ジルだって騎士団長としての仕事があるわけなんだから……これで終わりになる。
私のこの気持ちだって今日が終われば、何もかも色褪せて無くなるはずだもの。
そう思ってるのに、なのにどうして……こんなに切なくなるの?
目頭が少しだけ熱くなって目を擦って、滲む涙を誤魔化した時だった。