ただジルの顔を見るだけで顔が火照ってしまう私は、フェイムの背中に隠れるようにして前に進まないと回れ右してしまう勢いに駆られてしまう。


それくらい私には衝撃的な出来事だったというのに、ジルは何食わぬ顔で接してくるんだから本当に困る。


昨日の……キ、キスはジルにとってどんな意味があって、なんでして来たのか、理由を聞きたいけれど聞き出せないまま。


というか、なんで私ばっかり意識しなきゃいけないのよ。


ジルにとっては……きっと、キスなんて当たり前すぎる女性との関わり方なのかな。


あれだけ女性の扱いに慣れてるんだから、今更キスの一つや二つどうってことないのかな。


考えなくてもいい事が次から次へと出てきて、無意識に下唇を噛み締めていた。


「リゼさん」


突然フェイムに名前を呼ばれて顔を上げれば、苦笑交じりの表情を浮かべたフェイムが私の頭を撫でた。


「無理は禁物だよ」


「……うん」


フェイムが昨夜言っていた見る目が変わった、という言葉をあんな形で思い知ることになろうとは……。