飛竜の力も借りて、何とか魔物達を元いた階層へと戻らせれば洞窟内の静けさ達がやってくる。
「大方これで大迷宮への入口付近までは安全が確保されたけど……どうして聖女の結界が弱まってるんだろう」
「私が見た感じだと結界に干渉した跡が残ってた」
「誰かが意図的に結界を壊そうとしていたってこと?」
「聖女の結界を壊そうだなんて大賢者だとしても相当の腕がないと無理。それくらい加護の力は強力なのよ」
そう分かっていたとしても、あの結界の歪み方は相当の力の持ち主であるということを物語っていると言ってもいい。
でも一体誰が、なんの為に……理由が分からなくて困惑すると、フェイムが一歩私に近づいてきて顔を覗かせた。
「森の異変とも何らかの関係はありそうだね。でも今日はとりあえず宿に戻ろう。ここにずっと居続けて街の人達と遭遇したらそれこそ話がややこしくなるだろうし。明日ジルと一緒に大森林へと向かうのが一番いいと思う」
名のある騎士であるジルと共に行動する、それがどれだけ厄介事に巻き込まれないかを痛感したばかりだ。
「魔物達も元の階層に戻したことだし、暫くの間は街の人達に危害が加わることもないだろうから一先ず帰ろう」
フェイムの意見に賛同し、回れ右をして洞窟の外を目指す。