「そうならないためにも、お前はお家へおかえり」
自分を守るために相手に牙を向ける、それが自己防衛。
……ただ全てに害があると決めつけるのは私は嫌いだった。
王宮を追い出されてギルドで依頼を受ける生活になってから、私のせいで魔物がこの国のどこかに迷い込み討伐対象となっている。
少しでも無駄な死を無くすために落ちこぼれではあるけれど、冒険者達よりも先回りしてこうして元いた場所へと帰す、それが今の私にしかできないこと。
聖女として人々を悪から守る、それと同時に二つの種族が平和に暮らせる世界を夢見ている。
誰にも言えないんだけど、こんなへんてこりんな夢なんて。
でも私の腕の中にいる子ドラゴンだって、同じ命を持つ一つの種族ってことを、いつか誰かと分かち合えたらすごく素敵だろうなって思う。
「よし、行こっか」
子ドラゴンをそっと抱きしめて、迷宮入口へと私は足を動かし始めた。