まあ、容赦なく切り捨てる性格だっていうのはこの身でしっかりと理解しているからフェイムの気持ちも分からなくはないんだけど。
ずっと長らく生活してきたジルよりも先にフェイムの真実を知ってしまったということを言ったら、怒って扱いが雑になるジルが思い浮かんで仕方ない。
「当時リグマドが騎士団長を務めていて、その推薦でジルと王宮で働くようになったんだ。王様も優しくて魔法の才能に長けてるって褒められてからは魔道士の道を志すようになったのに、いつか僕の本当の正体がバレて、ジルに迷惑をかけるんじゃないかって不安が募っていくばかりだった。加えて多くの人間に囲まれる機会が増えて、過去の記憶が蘇るようになっちゃって王宮で働くのを辞めた。そこからは各地を旅するさすらいの魔道士になったってわけなんだ」
「だからあの日の夜、具合悪そうにしてたのも大勢の人に囲まれていたから?」
「うん。少人数ならまだ辛うじて耐えれるけど、多いのは本当に駄目。村を襲ってきた人間達の記憶で、過呼吸になる時もあったよ」
通りであの時そんなにぐったりしていたわけだ。
過去の記憶に苛まれる……その苦痛は痛いほどに知っている。
フェイムの話を聞きながら胸が少しチクチクと痛んだ。
「そんな環境から抜け出してから、僕はルーディ達のような守人の存在を知って、世界の均衡を保つための聖域を護る守護者援助者……みたいな存在で各地を赴いては魔法で手伝えることを僕なりにしてる」
「それで洞窟にいたのは?」
「少し前にルーディから聖域の様子がおかしいって連絡が入ってて、洞窟に原因があるかもと思って調べに行ってたんだ。僕の持つ絶対服従のスキルで、洞窟の主の飛竜にも力を借りようとしてたら、リゼさんがいて焦った焦った」
そう言う割には少し楽しそうに笑うフェイムに頬を膨らまして見せると、あの胸の痛みはどこかへ消えた。
「縄張り意識の強い魔物だから僕以外の人間がいたことに驚いて威嚇していたみたいだよ」
「あれは威嚇じゃなくて本気に殺しにかかって来てたわよ」
私の不満をぶつけてもフェイムはまたしても楽しそうに笑う。
命があるだけ良しとしてやろうと、小さく息を零し紅茶を一口啜った。