「僕がまだ五つになる手前ぐらいのそんな頃。平和以外知らない僕の目の前に、その不幸は訪れた。村の住民全員を標的にされて、“人間達”が僕達を虐殺しに攻め入ってきた。逃げることしか選択肢のない僕達は、散り散りになり……当時暮らしていた村の民は今はどうなっているか分からない」


辛い過去を話すフェイムだというのに、瞳の奥にある意思は何も揺らぐことなく私を見据えていた。


フェイムの言葉の中に何か引っかかるものを抱きつつ、口を挟まずに最後まで聞くことを選択する。


「必死に生き延びるため、幼い頃の僕なりの知識だけで何とか逃げ切って、辿り着いた大迷宮に身を隠した。でも瀕死状態になっていた僕は、もうそこから動くことはできずに諦めていた。そんな時……一人の剣士と遭遇した。僕に剣を向けてきて、ああついに終わるんだって幼いながらも分かったよ。でも、僕の心の奥底にはまだ終わりたくないって意思が残っていたんだと思う」


当時を思い出すかのように、左胸をぐっと握りしめたフェイムは私から目を離してそっと俯いた。


その仕草を見て彼に触れたくなって手を伸ばそうとしたけど、再び私の目を、目の奥に宿るものを見つめてくる。


ありのままの私を見つめるようなその瞳に、私は逸らすことなく彼の瞳を見続けた。