何処かで見覚えのある目元だと感じたのは、ゼノの目元が女性の目元に瓜二つだったのだ。
通りで見たことがあると錯覚してしまったわけだ。
「私は二人の母親であり、この森の守人のルーディと申します」
まるで笛の音色のような美しい声で自己紹介されて、急に頬が熱くなった。
エルフ特有のとんがった耳に白銀の長い髪を一つに束ねた美しい女性を前にしているせいか、妙に胸がドキドキする。
「リ、リゼです。一応、アンゼリオ国の聖女をしています」
「貴方が噂のリゼさんね。先代のエルゼナートからよく話を聞いていたわ」
……先代よ、こんな綺麗な人と接点があったなんて私知らないんだが??
しかも噂って変なことペラペラ喋ってないでしょうね…??
「どういう状況で洞窟に入ったかは今は敢えて聞かないけれど、身体を犠牲にしてまで魔力を使い果たすなんて……エルゼナートに知られたら怒られるじゃ済まないじゃない?」
「そうですね。きっと、怒られると思います」
「……エルゼナートのことは残念だったわ。きっと彼女も上で貴方のことを見守っているから、無理しちゃダメよ」
先代が亡くなっている事実まで知っているとなると、よっぽど深い関係の人だったんだと言われずとも理解できた。