「あら、目が覚めた?」
ぼやけた視界の中にいるのは見慣れない女性の姿と見慣れない綺麗な部屋。
自分が横になっているということだけは理解できたものの、その女性の姿をはっきりと映し出すために両目を擦って、再び目の前の光景を見つめた。
穏やかな表情でそっと私の頭を撫でて微笑むその女性は、どこか見覚えのある目元で働かない頭ではその答えはすぐに出せなかった。
ぼーっとしている私の顔が可笑しかったのか、楽しそうに笑う女性はちょっと待っててと言って席を外した。
誰もいなくなった部屋で私はゆっくりと起き上がると、女性が出ていった扉からフェイムが姿を表した。
「気分はどう?落ち着いた?」
「フェイム……ここは?」
「守人の隠れ家よ」
私の質問に答えてくれたのは、どうやらフェイムを呼びに行ってくれたであろう女性だった。
手際よく準備した紅茶を私に差し出すと、申し訳なさそうな表情をしながらベッドの横に椅子を持ってきて腰を下ろした。
「大事には至らなかったみたいで良かった。家の手のかかる子供たちに振り回されたって聞いたわ。本当に色々とごめんなさいね」
「家の、子……?」
「ええ。ゼノとルノ、二人の息子が迷惑をかけたみたいで……」
その言葉に点と点が繋がって線になるように、ぼうっとしていた頭がようやく動き出した。