深く深く沈むように眠りへと誘われているのに、フェイムの温もりや呼吸する音がやけに私の中へと入ってくる。


――優しい感覚の中で心地よい眠りへと落ちた私は、不思議な夢を見た。


何も無い夜空の下のような場所で、鏡の中で蹲る自分がそこにいて……体力やら何やらが底を尽きたんだと、動けないんだと言う。


「私も疲れちゃった。でも……約束は守れたね」


自分の力で守ったわけじゃないけれど、過去の出来事のように最悪の結果にはならなかった。


それを鏡の中にいる自分は甘えだと私を叱咤した。


でもそれでいいんだって、これが最善を尽くした結果なんだから一緒に休もうと顔を上げて、くしゃくしゃになった笑顔を向けてきた。


目の前にいるのは自分なのに、なんだか安心できる気持ちになって鏡の前で私も一緒に座って辺りを見渡した。


何も無いこの空間にただ一人いるだけなのに、誰かに優しく見守られているような気がして胸がいっぱいになった。


あれだけ疲れていた体も、徐々に紐が解けるように疲れが消えていき、気づいたら鏡の中にいたもう一人の私の姿はどこにもなかった。


コツンと鏡に額を当てると、ひび割れた鏡がパラパラと崩れ落ちていきこの空間もゆっくりと歪み出す。



瞬く間に歪んだ夜空の中に光が広がっていき、私はその眩しさに光に向かって手を伸ばし――。