心臓が一つ跳ねたのと同時に全身に熱が流れ込み、しばらくすると空気が変わる。
視界に溢れていたボロ屋は姿を消して、太陽の光が降り注ぐ神秘的な森が私達を迎え入れてくれた。
何とか成功した転移魔法だけれど、全身に走る痛みはやはり応えるものがある。
「神殿での祈りが出来れば、こんな結界の歪みもないはずなんだけど……今は仕方ないか」
辿り着いた場所はこの国と魔物達が住まう場所、迷宮【ダンジョン】を隔てる結界が張ってある場所の入口。
先代達が代々この結界を生み出し、守っていたお陰で魔物が出現することはない。
各地にいる聖女達も同じように結界を張っているらしいが、直に境界線を決めるように張っているものではなく、国の周りに魔除けの結界だけを張っているらしく、そこらの森には普通に魔物が生息していると聞く。
小さな村々に魔物が現れ被害が出たという話も、王宮内にいた時に耳にしたこともあった。
どちらが悪いというものはないけれど、無駄な血が流れるのは少々心苦しいものがある。