落ちこぼれな聖女がいなくなったら、今度はしっかりとした頭のいい出来る聖女を選んでね、リュードル。


今何処を放浪しているのか分からないけれど、充実した毎日を送ってね、父様、母様。


ここまでの道中に色々迷惑かけちゃったけど許してね、ジル、フェイム。


聖女の務めを全うできずに、この場で命を落とすことをお許しください、先代――エルゼナート様。


やって来る痛みを想像しながら、私は静かに目を閉じてその時がやって来るのを待った。


ヒュッと風を切る音が目の前から聞こえてきて、遂にその時はやって――。



「我が前にひれ伏せ」



芯のある凛としたその声が鼓膜を揺らして、思わず構えて目を閉じていたのを止めて、目の前を見つめた。


氷柱が粉々に砕け散り、パラパラと雪が振るように舞い落ちてくる氷の粒を無視して、飛竜相手に怯むことのない姿勢を見せるその後ろ姿。


大人しく地面に伏せた飛竜を前に、よしとだけ呟いて私の方へと振り返った。