ぎゅっと弟さんを強く抱きしめて、向こうがどう出てくるかを必死に考える。
魔法も使える私よりも有能な飛竜だ、勢い任せに向かってくるとは思えない。
ここで背を向けて走り出した所で背後を取られ、ひと噛みで殺られる。
なんて私の考えすらも読んでいて、そんな悠々と距離を詰めてきてるってわけですか。
「……本当に笑えない」
今にもいやらしい笑みを浮かべて来そうな飛竜に、私も負けじと睨みつける。
恐怖で逃げ出したりなんか絶対にしないんだから。
戦闘経験のない私だってね、ドラゴンとは一緒に生活してきたのよ。
飛竜如きにビビるとでも思ってるんじゃあないでしょうね?
「グォオオーーッ!!!」
「っ……!!」
鼓膜が今にも破れそうな大きな咆哮に、思わず身を竦める。
訂正、やっぱり怖いです。
私の相棒のリュードルは、理性と知性と人の言葉を修得してる賢いドラゴンなんで、そんな威嚇された経験ないんです。