基礎の基礎程度、アカデミーに入学する前の子供が扱うレベルの魔法しか私には干渉できない。
これも聖女としての力が芽生えたのが遅かったせいだと、先代には言われていたけれど、何となくそれが先代の優しい嘘だったのではないかと思ってしまう。
出来上がった魔法陣にこんなもんかと納得して、魔法陣の中へと入ると胸の前で両手の指を組んだ。
「導くもの 我と贄の血において 其方を包む唄 今ここに」
呼吸をするようにその言葉を紡ぐと、魔法陣がキラキラと輝き出し文字が浮かび上がる。
その文字が宙を舞い姿形を変え、私の体を包み込み魔法が発動し始める。
時々集中力が欠けていたりすると、すぐに失敗する魔法の一つだけれど、今日は順調だ。
クッションの上にいる子ドラゴンに声を掛けて、魔法陣の中へと誘うとそのまま最後の詠唱を唱える。
「地と地を繋ぐ掛橋よ いざ我を導かん《シュッド=ジェルガ》」
光り輝く魔法陣が私と子ドラゴンを包み、風が吹き荒れる。