それにゼノとの約束だってちゃんと果たさなきゃいけない。


「こんな所で終わるような落ちこぼれじゃないのよ」


少年を抱きかかえながら立ち上がり、来た道を戻ろうとしたその時だった――。


ドシン……と音を響かせながら低い唸り声を上げる何が、私の影を覆い隠した。




一番恐れていたその時が――ついにやって来てしまった。




悲鳴すらも上げられない緊迫したこの空気に、私は振り返ってそれを確かめることしか出来なかった。


鋭い牙を向けられ、愕然とした私の顔が魔物の禍々しい瞳に映り込んでいた。