ごめんゼノ、約束はちゃんと守るから。
ゼノに託した強制帰還の魔法を解いて、その分の魔力を目の前にいる少年に全てを注いだ。
少しだけ顔の血色が良くなって、あれだけ冷たかった身体も熱を取り戻し始めた。
良かった……これで何とか持ち堪えてくれるはず。
「残る問題は――ちゃんと帰れるか、ね」
ゼノとの間に帰る道標があったからまだ行けると思ってたけど、こうなったら意地でも帰るしかない。
複雑な道では無かったから、多分……ちゃんと帰れるはず。
但しそれは道中に“何も無かったら”の話だ。
回復魔法を掛けている間に前方からやって来ている大きな気配は随分と距離を縮めてきていて、遭遇する確率の方が高い気がする。
そんな事をごちゃごちゃ考えている暇があったら、今は回れ右して出口に近づいていた方がまだ何とかなる気がする。