道幅も気づけば広がっていて、あれだけあった身体の異変が薄れていくのが分かる。
道の圧迫感から解放されたいと、いつの間にか駆け足になっていた私を待ち受けていたのは、洞窟の天井から魔力を取り込んで青白く発光する鍾乳石が牙を向ける、広闊な空間が広がっていた。
「綺麗な場所……」
自分が今危険な場所にいるということは、頭では理解しているのに、感性がこの空間を神秘気的で見惚れてしまっていた。
青白い光は洞窟内を乱反射するように自らを輝かせては、呼吸するように光を強弱させる。
ここが魔窟と呼ばれていない場所だったら、心が乱れた時にでも訪れたら癒されそうなのに。
ってそんな事を考えてる暇なんかないのよ。
慌てて周囲をしっかりと見渡した私の視界に飛び込んできたのは、衰弱しきってその場に倒れ込む一人の子供の姿。
「……!!」
ゼノの弟さんで間違いないと駆け寄った私は、彼をゆっくりと抱きかかえて顔色を伺った。
肌は氷のように冷たく血の気のない顔は苦しみに耐えるように、眉間にしわを寄せていた。